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ファレノプシス~幸福をあなたへ~

ファレノプシス~幸福をあなたへ~

結婚秘話4

ルーン達が東の壁に着いた頃、フィリエル達女性陣は、結婚式の準備でロウランド

家をバタバタと忙しそうに走り回っていた。

ロウランド家に来てからというもの、フィリエルは、ウェディングドレスの試着や

ら、結婚式の飾り付けやらでいい加減にしてほしいという程ウンザリしていた。

まぁ、元はといえばセラフィールドで結婚式を挙げたいなどと言ったフィリエルが

いけないのだが・・・。

「まぁ、フィリエル!こんな所にいたのね。アデイル様が呼んでらしたわよ!」

「・・・わかったわ、マリエ。すぐに行く。」

アデイルという名前を聞いて一瞬嫌な顔をしたフィリエルだったが、マリエににら

まれて、しぶしぶその場を後にした。

数分後、フィリエルはアデイルの話に耳をかたむけていた。話といっても、アデイ

ルはなかなか本題に入ろうとしない。

(どうせまた変なことを思いついたんでしょ。)

そんなことを考えながら、フィリエルは辛抱強く待ったいた。

すると案の定、アデイルはとんでもないことを言い出したのだ。

「ちょ、ちょっと待ってアデイル。今なんて言ったの?」

「あら、聞こえませんでしたの?ここでは式を挙げないと言いましたの。」

ハァ!?っという顔をしているフィリエルとは逆のすばらしい程の笑顔でアデイル

はさらっと言いのけてしまった。

「だ、だってこんなに準備したのに、どういうことなの?」

困惑気味のフィリエルを、どこか楽しそうな目で見ながら、アデイルは答えた。

「あら、だってここで式を挙げたんじゃルーンの喜びも半減してしまいますわ。だ

から私、考えましたの!」

「・・・考えたって、何を?」

嫌な予感がフィリエルの体を走った。

「やっぱり式を挙げるなら、最高の場所で挙げなければいけないと思わない?」

(まさか・・・。)

そう、ルーンにとって一番いい所と言えば、あそこしかない。

「また少し予定が遅れてしまいますわね。ここからあの天文台まで、いろいろ運ば

なければいけないんですもの。」

(・・・やっぱり。)

フィリエルは、深いため息をつきながら言った。

「あのね、アデイル。あそこはもう5年くらい使ってないのよ?そんなところ

で・・・。」

「あら、それくらいどうってことありませんわ!私掃除くらいできましてよ!!」

フィリエルの言葉を遮って、アデイルが意気込んで言った。

「でもね、アデイル・・・。」

「あなただって見たいんでしょう?ルーンが喜んでくれた時の顔を・・・。」

「い、いや・・・。それはそうだけど・・・。」

「なら決まりですわ!!」

まだ悩んでいるフィリエルを半ば無視して、アデイルはいそいそと部屋を出て行っ

た。こうなると、アデイルを止められる者など一人もいないのだ。

(・・・どうしてただでさえ忙しいのに、さらに忙しくしたがるのかし

ら・・・?)

フィリエルは少しの間その場に留まっていたが、仕方がないというように、アデイ

ルの部屋を後にした。

今のフィリエルには、再会した時のルーンの顔だけが、心の支えだった。

(けど・・・、ユーシス様は大丈夫かしら?ごまかしきれればいいのだけ

ど・・・。)

フィリエルは、ルーンの足止めをしているユーシスのことを思って、少し哀れん

だ。

そして、この時のフィリエルの予感は、見事に的を射ていたのだ。

事実この後、ユーシスはごまかすのに精一杯になっているのだから・・・。

                   ≪5へ続く≫


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